劇的にフィット感が上がる登山靴の結び方

コラムのページを開いて頂きありがとうございます。
皆さんは登山の際に、足の疲労や靴擦れなどで不快な思いをした経験はありませんか?
誰しも一度は足を痛めたり、靴擦れのような症状を感じたことがあると思います。
あまりにも激しいものだと予定通りに下山できなかったり、次の日まで痛みを引きずってしまったり、更には転倒してケガをしてしまったなど、楽しい思い出とは言えなくなってしまいますよね。

特に新しい靴は揉めば多少解消されますが、まだ硬く足にも慣れていないので歩きづらいもの。
お店ではフィットしたと思ったのに、実際のフィールドでは歩きづらくてまた新しい靴を買ってしまったなんてことも。
ただ実際は、足のトラブルは靴紐の締め方次第でかなり軽減できることをご存じですか?

左右でそれぞれ形が違って、時間帯によっても大きさや形状が変化する足。
そんな部位なので、左右対称の既製品シューズをフィットさせようとすると、それぞれの足に合った結び方や靴下で調整してあげないと本当のフィット感は得られないように感じます。
ということで今回は、アウトドアショップで登山靴の販売経験のある私が「劇的にフィット感が上がる結び方」をご紹介いたしますのでぜひお試しくださいませ。
足のトラブルはなぜ起こるのか

下山中に起こることが多い足のトラブル。
そもそも靴擦れや足の痛みはなぜ起こるのでしょうか?
全ての症状に当てはまることではありませんが、上りでただでさえ疲労が溜まっている状態で、靴の中で足が動いてしまうことが大きな原因の1つ。
下山中は身体の荷重が前下方にかかるので、靴の中で足がどんどん前方にズレていきます。
そのズレる過程で、足と靴が擦れてしまう事が靴擦れに、そして普段当らない部分が靴に当ることで痛みに繋がってしまうのです。

また歩く度にズレることで、無意識のうちに足が靴の中で最適なポジションを探そうとする動作が加わります。
そのため足も疲れやすくなってしまい、安定した歩行が出来ずに転倒や捻挫を引き起こしてしまう可能性も。
そうならないよう足が、靴の中で前方にズレないように固定してあげることが重要です。
しっかりと固定することで、ズレを気にせず不安なく歩き出すことができるほか、後方に固定してあげることでつま先に空間ができ、指先が靴に当ってしまうこともなく安全な歩行ができるようになります。
ヒールロックで快適な歩行を

では、足を靴の後方に固定してズレにくい状態を維持できる「ヒールロック」という結び方をご紹介いたします。
足の甲をしっかりと押さえつけてあげることでカカトを靴の後方に固定し、靴の前方へのズレを防ぐ結び方。
また下りだけでなく、上りでも疲れにくい効果が期待できます。

まずは大前提として、靴紐全てを緩めます。
この工程を省いてしまうと最大限のフィット感は得られなくなってしまうので、ちょっと面倒ですがこの後の数時間の歩行を快適にするためにもしっかりと行うことがオススメです。

全ての箇所を緩められたら靴のカカトを地面に打ち付け、靴の後方にカカトがしっかりと収まっている事を確認し、改めて先端から締め直していきます。

足の甲と足首の境目あたりの箇所まで締めたら、ひもをクロスするのでは無く、それぞれ一段上に通します。


平行に通した箇所に左右それぞれクロスするように通していきます。
左右の二点のホールを使って足の甲を押さえることで、よりしっかりとフィットさせることができます。





その後は通常通りクロスしながら通して大丈夫です。






下りは安全性を重視してしっかりと締める必要がありますが、丸一日キツく締めると逆に疲れてしまう可能性もあるので、上りは少し緩めたりと要所要所で締め具合を調整してあげると良いと思います。
上りでも効果的

ヒールロックは上りでも効果的です。
下りほどシビアにならなくてもトラブルは発生しにくいので、キツ過ぎない程度に適度に締めましょう。
歩き始めてから再度調整しても良いと思います。
上りは足首を動かすので、足首にかかる手前まで締めます。
つまりヒールロックの箇所までしっかり締めたら大丈夫。
そこで固結びをして、余ったひもは靴の周りを這わせて歩く際にブラブラと邪魔にならないようにしておきましょう。



また、ハイカットブーツのように締める箇所が多いタイプは、途中で固結びをしてあげればそこで一旦締まり具合が完結します。

そのため、場所によって少しキツくしたり緩めたりという調整を行うことも可能です。
解けにくい二重ちょうちょ結び

最後まで締め終わったら、ちょうちょ結びなどで完結させるかと思いますが、歩いているとだんだんほどけていってしまうことも。
そんな時はちょうちょ結びの固定部分を二重に締める「二重ちょうちょ結び」がオススメです。
最初はちょっと結びづらさを感じる方もおられますが、慣れてしまえば普通のちょうちょ結びのように使えます。
まずは最初にねじり結びを行いますが、こちらも一重ではなく二重にしておきます。

その後、通常のちょうちょ結びの場合は指に沿わせて一周ひもを這わせますが、二重ちょうちょはこの部分を二周這わせます。




そしてしっかり締めて、形を整えたら完成です。
一重のちょうちょ結びに比べてひもの量を沢山使うのでお気をつけ下さい。
最後に
いかがでしたでしょうか。
足のトラブルの防止には、ひもの結び方や靴下の厚みを左右で変えてみたり、中敷きを変えたりと様々な方法がございます。
どれもひと手間はかかってしまいますが、靴を買い替えることを考えたら試してみる価値はありそうですよね。
ちなみに私は、ヒールロックを使ってから下りのコースタイムが速くなりました。
また二重ちょうちょで結んで以来、自然にほどけてしまうことも無いので、皆様もぜひやってみてくださいね。