HOW TO

ポタリング登山のすすめ

「少ない時間でも、アウトドアの感動を」

 小学生のころ、私が入っていたボーイスカウトの活動で、年に一度「オーバーナイトハイク」という強烈なイベントがありました。
丹沢のヤビツ峠から塔ノ岳を経由、大倉尾根(通称バカ尾根)を下って秦野ビジターセンターを目指すというもの。

5年生のときに初参加しましたが、そもそも登山経験はゼロ。
徹夜も初めてだったので、本当に、本当に(笑)大変な冒険でした。
登山中に何度も訪れる、疲れて帰りたいと思うタイミング。
そんな時にちょうど、満天の星空や、初めて見る夜景と夜食のおにぎり。

と、帰りたい気持ちを上回るイベントがちょこちょこあって「もう30分くらい頑張ってみようかな」となんとか踏ん張れたのを覚えています。
そんなことを繰り返し、やっとの思いで踏破できた瞬間は意外と「ただただ疲れた」という思いだけ。
しかし、秦野駅までのバスに揺られながら、窓に映る塔ノ岳の山頂が見えた時「あそこまで登ったんだ」と満ち足りた気持ちに気づいて、ちょっと大きくなった自分を感じました。
帰って数日は、もう2度とやりたくないと思っていたのに、1週間後にはまたやっても良いかなって思ったり。
そんな小学生の頃の、ボーイスカウト活動を通して、アウトドアの不思議な魅力を知る事ができました。

子供のころは新しい気づきが多く、まいにちが発見と感動の連続です。
しかし大人になると、時間も環境も繰り返す事が増えて一瞬一瞬がおざなりに、自動化されやすい生活に。
モノよりコトと言われる現代で、「コト」に重きが置かれるのは「感動の記憶」こそ、日常でいちばんの、助けとなるからではないかと思います。

私自身、仕事と育児で、昔よりも自然の中で過ごす時間が減りました。
しかし、あの空気感や高揚。人生の希望といったら大げさでしょうか。
そんな事をいつまでも感じていたい。
ボースカウトのリーダーが私に教えてくれた「地球のワクワク」を忘れたくない。
そんな想いから、今の生活に影響が少なく、充実した遊び方は無いかと考えました。
そして、思いついたのが今回ご紹介するポタリング登山です。

ポタリング登山とは

ポタリング登山とは、読んで字のごとく「ポタリング」と「登山」を1つの旅に組み込む遊び方。
登山口までの移動をポタリングしたり、登山後に周辺をポタリングする事で、まわりの地域もいっしょに楽しめます。

マイカーで登山口まで行き、登った後に付近をぐるっとポタリングしても良いですね。
サイクリングではなく、あえてポタリングとしたのは、「~まで行けた」という目的地へ至るだけが目標ではないため。
そんな達成感の他に「スケジュール通りにこなせた」や「この山が好きな理由がわかった」など、様々な分野の気づきや感動を感じる事が大切です。

そのため、一瞬一瞬、一動作を味わいながら行うこと。
お気に入りの山でも、登山道や景色以外はあまり知らないなんてことありませんか?
もっと繊細に、自身と地域を知ることで、より深い理解と充実感につながるのではないでしょうか。
登山とポタリングそれぞれのルートが簡単だったり、短時間の行程であっても、両方行うことでしか得られない感動があるはず。
ポタリングと一緒なら、普段と違うルートから登山してみようかな?
なんてのも良いですよね。
今回は、事前準備や持ち物などをご紹介いたしますので、どうぞ最後までおつきあい下さい。

場所の選びかた

2つの遊びを1つの旅でこなすので、場所選びは重要です。
自身の体力と相談しながら、無理のない地域を選びましょう。
公共交通機関がスムーズなエリアなら、予定外のトラブルにもラクラク対処できます。
箱根や鎌倉、高尾などの観光地から始めたら良いでしょう。

私は、まず「登山ルート」と「ポタリングルート」のどちらを主軸に据えるか決めます。
そして、主軸に絡ませられるルートが無いか、グーグルマップを見ながら探していきます。
誰もやっていないようなプランが組めたら、充実感に繋がるはず。
隙間時間の暇つぶしとして、きっと楽しいと思いますよ。

初めてのルートづくり

では私が初めてポタリング登山のコースを作成したお話をしましょう。
初めて作ったポタリング登山のコース「八王子駅→高尾山ルート」は今でも一番のお気に入り。
みちくさポイントも沢山ある飽きのこないコースです。

初の試みのため、余裕をもって半日ほどでこなせるコースを作ろうと、近所の八王子駅付近を主軸に山を探しました。
ポタリングは片道1時間程度。登山も往復で3~4時間のコースが理想。みちくさも含めると計6~8時間程度のスケジュール。
この条件でグーグルマップとにらめっこしていると、高尾山が距離や時間がちょうど良さそうだと分かりました。

高尾山は「電車で都心からのアクセスが良好」「ロープウェイとリフトがあり安心」「こころを癒す薬王院」「豊富な自然と動植物」など他にはない魅力にあふれる山です。
八王子駅から高尾山までは約8kmの距離。(自転車で約40分程度)

道中はカーブも少なく迷いにくい。さらに、旧甲州街道を走るので立ち寄れそうなお店もたくさん。また、高尾山口駅には無料の駐輪場があるので安心。
私の場合は折りたたみ自転車を使っているので、高尾山口のコインロッカーに預けられる。

などなど、無理なくできそうだなと思い、このルートに決定しました。

タイムスケジュールの組みかた

コースを選んだら、次はタイムスケジュールの作成です。
ここがポタリング登山の「一番のキモ」と言える部分。
時間配分がしっかりしていれば、それだけ気持ちに余裕もでき、みちくさも楽しめます。
自分で組んだ予定時間にちゃんと間に合ったか、なども面白みの一つ。
以下は私が普段使ってるタイムスケジュールになります。ご参考下さい。

9:00八王子駅南口   出発旧甲州街道を経由
9:40高尾山口駅    到着駅周辺のコインロッカーに折りたたみ自転車を預ける。
10:00稲荷山コース   登山開始ポタリングと登山の服装は兼用のため着替え無し。
11:40高尾山山頂    到着10分ほど小休憩。汗冷えしないうちに下山。
12:30高尾山      下山薬王院本堂や売店を経由。1号路で下山。
12:40高尾山口駅    出発コインロッカーの折りたたみ自転車をピックアップ。
13:00昼食 休憩登山口まわりのお蕎麦屋さんは鉄板!高尾駅付近もオススメです!
14:30ティータイム八王子駅まではおしゃれなカフェがたくさん!
16:00八王子駅南口   到着おかえりなさい。お疲れさま!

グーグルマップの自転車用タイムや高尾山往復のコースタイムを合計し、最低限かかる時間を確認します。
八王子駅→高尾登山→八王子駅の移動時間は余裕をもって約3時間。
ただ、高尾山に着いて直ぐに登り始められるわけではないので、登る前の準備時間や、下山後の一呼吸、昼食などの時間を追加して計算します。

高尾→八王子駅はゆったりした下り道になるので、下山後ほとんど休憩せずに自転車に乗り、漕ぎながらクールダウン。休憩はみちくさといっしょにまとめて取るのが私流。
そのために、2時間ほど自由時間を追加して総コースタイムを決定しています。
そして、自身の一日の予定と照らし合わせて、何時から何時までと実際の時間を決めていきます。
自身のリズムを感じ取りながら予定が組むと、ちょっと登ったような錯覚になって面白いでしょう?

私は、夜に娘をお風呂に入れるが担当なので、遅くとも18時頃には自宅に帰りたい。
制約や情報を仕入れながら、いかに遊んでやろうか。
そんな想像を膨らますのも、ポタリング登山ならではの魅力です。

適した服装は?

服装や持ち物は、登山とポタリングの両方で使えるものを選びたいところ。
マイカーを使わない場合はなおさらです。
服装は、その季節に適した登山用ウェアで十分どちらも対応できます。

ただポタリング登山は、みちくさなど途中で一息が多いので、普段のセットに+1枚上着を追加しても良いかと。
しかし、靴に関しては登山も自転車も、それぞれ専門のタイプがあるので兼用できるのモデルを探さなければなりません。

ハイカットは登山では使いやすいですが、足首を動かす自転車では不向き。
かといってスニーカーだと登山では心もとないですね。
私は、クライミングの岩場まで行く時に使用する「アプローチシューズ」や「トレイルランニング用シューズ」を使用しています。

どちらもローカットですが、アウトソールが硬めなので、自転車を漕ぐにも登山にも向いています。
より登山重視はトレランシューズ、自転車重視はアプローチシューズのイメージなので、コースで使い分けてもいいですね。

余談ですが、以前のブログでフィット感を高める靴ひもの結び方をご紹介しています。以下の画像をクリックしてご参考下さい。

持ち物は?

荷物が多いと自転車が漕ぎづらいので、25L以下のバックパックに収まる程度が理想です。
とはいえ「遊び心」が大切なので、お気に入りのセットは外せません。

私の場合は、お茶を淹れるのが趣味なので、必ずクッカーとシングルバーナーのお茶セットは持っていきます。
その他は登山の持ち物をベースに、自転車のリペアキットなどを追加したら良いでしょう。
そんな中でも、おみやげを入れるスペースを空けておくのがコツ。
以下が私の持ち物リストになりますので、ご参考ください。

バックパック(20~30L)ヘッドライト
トレイルランニング用シューズ
(又はアプローチシューズ)
地図
(山と高原地図など)
水筒
(ハイドレーションがオススメ)
携帯電話
カメラモバイルバッテリー
速乾性のタオルポケットティッシュ
常備薬救急セット
ウィンドブレーカーウルトラライトダウン
帽子サングラス
汗拭きシート折り畳み傘
レインウェア自転車リペアキット
ザックカバーお茶セット

最後に

いかがでしたでしょうか。
足元の気づきを拾い上げていくのがポタリング登山。
私自身、北アルプスの岩稜帯などを積極的に登っていた頃は「テクニック」と「スピード」のみを追い求めていました。目に入る景色の美しさ、難しいルートをこなした時の達成感。
ただひたすらその部分を研いでいた気がします。
もちろん「非現実」な達成感として大好きですが、自然に浸っている感覚はポタリング登山ならではだな感じます。
なんかアウトドアがちょっと日常に近づいたような。なんか身近な。
短時間だけどちょこちょこ続ける。そしてビッグイベントも定期的に。
が理想的だなと。
0と1は全然違う。1やれば2も10も100も見えて楽しくなります。

「少ない時間でも、アウトドアの感動を」